日本で生活していると、英語を学ぶという事は、文法、ボキャブラリー、読解力などを身に付けるという事になると思います。一方、海外留学では、それらに加え異国の人達の文化や価値観を学ぶ事ができる様になります。それが、留学をする醍醐味だと私は思います。
私は、かつてアメリカのカレッジに在学している時、英作文(English Composition)の授業で、日本の俳句をアメリカ人の前でプレゼンテーションする機会に恵まれました。通常、アメリカ人にとって詩というのは短くまとめるという概念はなく、長いものでは数百文字にも及びます。なので、アメリカ人の教授は、日本の俳句が、5・7・5と17文字で表現される世界で最も短い詩であるという点に、強い関心を持った様です。そこで、日本人である私に、俳句の意味をアメリカ人の前で説明してほしいというリクエストがありました。私は、数日間、考えた末、下記の松尾芭蕉の俳句をプレゼンテーションに使いました。
A frog (古池や)
Jumps into(蛙飛び込む)
Sound of water(水の音)
きっと、アメリカ人の学生も、俳句の素晴らしさを理解してくれるだろうと期待していました。多くの日本人なら、月明かりが反射する、静かな池に、小さな蛙が「ポチャ」と飛び込む様な風景をイメージするのではないでしょうか?そして、その光景にどこか美しさを感じると思います。
しかし、大半のアメリカ人の反応は真逆でした。この句を読むと大きなガマガエルが、水しぶきを起てて飛び込むという、とてもugly(醜く)、nasty(不快)な詩だと頭に想像したそうです。そこで、私は、後日「日本のお寺の古池の写真」や「ガマガエルでなく小さな蛙の写真」を持って行き説明した結果、やっとアメリカ人の学生達は私が伝えたかった内容を「Now, I get it! (今、あなたが伝えたかった事が解った!)」と言って理解してくれました。後になって笑えますが、当時は、真剣でした。
かつて授業を受けたQuincy Collegeの校舎
正確に言葉を訳したので、アメリカ人は自分の意図を汲み取ってくれるだろうと期待しても全くされない経験を留学中に何度もしました。しかし、徐々にアメリカ人の価値観を理解できる様になると、言葉以上に深くお互いを理解できる様にもなりました。これから留学されるは、是非、英語に加え、異国の文化や価値観も吸収して、有意義な留学生活をしていただきたいです。
(by ボストン留学サポート・小松志行)